北海道大学/大学院教育学研究院/教育学部
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E-mail

shirozu*edu.hokudai.ac.jp
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専門分野

教育思想

学部所属

教育基礎論分野

学院所属

学校教育論講座

メッセージ

言葉は思想である。日頃、あたりまえのように語っている言葉にもそれぞれ歴史があり、いったん過去にさかのぼり、いつ、誰が、どのような文脈でその言葉を語ったのかについて探求してみると、これまでとは違った世界を垣間見ることができる。というよりむしろ、これまで自明だった世界が異様なものとして現れなおすということかもしれない。

専門領域

教育思想・西洋教育史

研究テーマ

《教育(education)》に関する語彙基板の生成と変容に関する歴史研究

研究の内容を表すキーワード

educatioとdisciplinaの翻訳受容史

研究の詳細な内容

 私の研究の出発点は教育が統治と緊密に結びつくようになった契機、18世紀のポリス論分析にありました。 ポリス論とは衛生・治安・救貧をはじめとした生活を統治する内政実務の総体です。公教育の構想もまた、ポリスの一つとして、福祉と治安の両義的配慮のなかで立ち上がり、今日もなお行政実務家の思惟はその隠微な影響下にあります。
ここ数年、私が少しこだわっているのは、統治に関する思想の系譜と、そこから眺めた教育言説の生成と変質の歴史的過程を再検証することです。そこで次第に分かってきたのは、どうやら「教育」と無造作に訳され続けてきたeducationは、本来、子どもを食べさせ、大きくする営み、〈生〉を養い育てることを意味していたということです。しかしeducationは統治論に取り込まれ、やがて能力を引き出すことを原義とするというような俗説が蔓延するようになります。現代はさしずめ、能力の商品化、人間の有能化があらゆる分野で増殖し、全面展開しようとしている局面にあると言えるでしょう。このような近代教育言説を脱構築すべく、敢えて時流に背を向けeducationの古層に立ち帰り、〈生〉を養い育てる営みとして再定位する、その基礎となるような教育思想研究を鍛えていこうと考えています。

略歴

(学歴)

1988-91 東京大学教養学部前期課程理科Ⅰ類
1991-93 東京大学教育学部教育学科
1993-95 東京大学大学院教育学研究科教育学専攻修士課程(教育史・教育哲学コース)
1995-01 東京大学大学院教育学研究科総合教育科学専攻博士課程(教育史・教育哲学コース)
2001 同上修了

 

(職歴)

1998-99 日本学術振興会特別研究員(PD)
1999-03 神戸大学発達科学部講師
2003-04 文部科学省在学研究員(パリ第Ⅴ大学)
2003-13 神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授
2013-19 北海道大学大学院教育学研究院准教授
2019-現在 北海道大学大学院教育学研究院教授

 

(委員歴)

2012-13 教育史学会書評委員
2016-17 教育史学会書評委員
2016-18 教育史学会機関誌編集委員
2019-20 教育史学会書評委員
2019-現在 教育史学会理事
2020-現在 教育史学会機関誌編集委員

主な研究業績

(著書)
[単著]

  • 白水浩信『ポリスとしての教育―教育的統治のアルケオロジー』、東京大学出版会、2004年

[共著]

  • 宮﨑隆志・松本伊智朗・白水浩信編『ともに生きるための教育学へのレッスン40―明日を切り拓く教養』明石書店、2019年(白水浩信「学びと教育」(扉)70-71頁、「educationは能力を引き出すことか」72-75頁)
  • 比較家族史学会編『現代家族ペディア』弘文堂、2015年 (白水浩信「出産と育児」124-126頁、「性教育」143頁、「家族と啓蒙(家族への教育)」145-147頁、「治安と家族」150-151頁)
  • 鈴木七美ほか編『高齢者のウェルビーイングとライフデザインの協働』御茶の水書房、2010年 (白水浩信「寄り添う―福祉・教育の総合施設「楚洲あさひの丘」)
  • 文化人類学会編『文化人類学事典』丸善、2009年 (白水浩信「福祉と生権力」400-401頁)
  • 教育史学会編『教育史研究の最前線』日本図書センター、2007年 (白水浩信「西洋における身体と教育の歴史」196-202頁)
  • 神戸大学ヒューマン・コミュニティ創成センター編『人間像の発明』ドメス出版、2006年 (白水浩信「健康な人間―衛生的配慮と予防のユートピア」53-85頁)
  • 神戸大学発達科学部編『キーワード 人間と発達』大学教育出版、2005年 (白水浩信「人間は「発達」をどのようにとらえてきたか?―「発達」の発見と変遷」、「統治としての教育」)

(論文)

  • 白水浩信「Disciplinaの系譜学―サン・ヴィクトルのフーゴー『修錬者の教導』を読む」『北海道大学大学院教育学研究院紀要』、第139号、1-68頁、2021年
  • 白水浩信・寺崎弘昭「educationの初出―ヴァンサン・ド・ボーヴェ『貴族の子らの教養』フランス語訳』『北海道大学大学院教育学研究院紀要』、第136号、93-119頁、2020年
  • 白水浩信「教育言説揺籃期のéducationなき教育論―ジャック・アミヨとプルタルコス『子どもの教育について』」『思想』(岩波書店)、No.1126、31-43頁、2018年2月
  • 白水浩信「からだとこころを捉える―サマーセミナー雑感」『日本教育史往来』第230号、9-10頁、2017年10月
  • 白水浩信「ラテン語文法書におけるeducareの語釈と用例―ノニウス・マルケッルス『学説集』とエウテュケス『動詞論』を中心に」『北海道大学大学院教育学研究院紀要』、第126号、139-155頁、2016年
  • 白水浩信「知育と徳育の断絶をこえて」、『北海道大学教職課程年報』、第5号、37-56頁、2015年
  • SHIROZU Hironobu, `Welfare Complex, Sosu Asahi-no-oka: Facility of people “snuggling up” to each other,’ Senri Ethnological Studies, National Museum of Ethnology, No.80 pp.33-52, 2013
  • 楊鋥・白水浩信「アメリカにおける精神衛生運動と教育―アドルフ・マイヤーの精神衛生論を手がかりに」、神戸大学大学院人間発達環境学研究科『研究紀要』 第5巻第2号、47-54頁、2012年
  • 白水浩信「教育・福祉・統治性―能力言説から養生へ」、日本教育学会『教育学研究』 第78巻第2号、50-60頁、2011年
  • SHIROZU Hironobu, `Well-being beyond Police Technology: A Brief History of the Governing Mentality,’ MINPAKU: Anthropology Newsletter, No.29, pp.5-6 2009
  • 白水浩信「高齢者の自立と交通」、国立民族学博物館機関研究 プロジェクト『ライフデザインと福祉(Well-being)の人類学―多機能空間の創出と持続的活用の研究』 67-68頁、2009年
  • 島野裕子・白水浩信「「かにばば」と胎毒 : 近世産育書における「胎毒」観の変遷に関する一考察」、神戸大学大学院人間発達環境学研究科『研究紀要』 第1巻第1号、91-100頁 2007年
  • 増井三夫・松岡律・柏木敦・白水浩信・新保敦子・橋本伸也・羽田貴史「教育史学会会員調査」、教育史学会『日本の教育史学』、第48集、158-172頁、2005年
  • 白水浩信「近代統治論とその人間形成観―教育・人間・ポリス」、神戸大学発達科学部『研究紀要』 第11巻第1号、11-28頁、2003年
  • 白水浩信「近代ポリス論における教育理念形成に関する歴史研究」科学研究費補助金研究成果報告書 全180頁 2002年
  • 白水浩信「ヘーゲル『法哲学綱要』における教育―「市民社会の息子」とポリツァイ」神戸大学発達科学部教育科学論講座『教育科学論集』 第6号、45-53頁、2002年
  • 白水浩信「西欧ポリス論における近代教育の生成―ポリス・衛生・教育」、博士論文、全174頁、2001年
  • 白水浩信「ポリス論の受容と教育的統治の生成―後藤新平『國家衛生原理』を中心に」、神戸大学発達科学部『研究紀要』 第8巻第1号、49-67頁、2000年
  • 白水浩信「統治技術から人類学へ(コメント)」、日本民族学会『民族学研究』 第64巻第4号、521-523頁、2000年
  • 白水浩信「18世紀における子どもの性と教育的配慮―英・仏のマスターベーションについての教導書を中心に」、教育史学会『日本の教育史学』第41集、213-231頁、1998年
  • 白水浩信「書評 鈴木七美著『出産の歴史人類学』」、『大人と子供の関係史研究会論集』、第3集、109-111頁、1998年
  • 白水浩信「翻訳 ブシェ・ダルジ「ポリス」-『百科全書』より」、東京大学大学院教育学研究科教育学研究室『研究室紀要』 第24号、75-84頁 1998年
  • 白水浩信「18世紀フランスにおけるポリスと教育-N・ドラマールとその周辺」、日本教育学会『教育学研究』第65巻第2号、11-20頁、1998年
  • 白水浩信「人口・衛生・教育―J・P・フランクを中心に」、東京大学大学院教育学研究科教育学研究室『研究室紀要』 第23巻、23-33頁、1997年
  • 白水浩信「J・P・フランク『医療ポリツァイ』と家族の実践―官房学における人口と産育」科学研究費補助金研究成果報告書(研究代表者:寺崎弘昭) 、35-51頁、1997年
  • 白水浩信「近代ポリス論における教育・序説―社会という幻想・個人という妄想」、東京大学大学院教育学研究科教育学研究室『研究室紀要』 第22号、57-65頁、1996年
  • 白水浩信「N・ドラマール『ポリス概論』と「教育」―18世紀フランスにおける統治理論と家族」、東京大学大学院教育学研究科『紀要』 第36巻、81-90頁、1996年
  • 小松佳代子・白水浩信「独身者のユートピアと近代家族」『大人と子供の関係史研究会論集』 第1集、166-167頁、1994年
  • 白水浩信「近代ポリス論における教育の位相―E.Chadwickを手がかりに」修士論文、全120頁、1994年

所属学会

日本教育学会、教育史学会、教育哲学会、大人と子供の関係史研究会、

担当する授業

学部
 教育学概説(教育の思想)
 教育思想史
 教育学(全学教職科目)
 専門演習(教育思想)

大学院
 学校教育特論(教育思想)
 学校教育調査実験Ⅰ・Ⅱ

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