学校の教員をはじめ、 様々な道に進んでいる教育学部の卒業生。
多彩な進路を紹介します。
学校の教員をはじめ、様々な分野に就職する人、進学する人。 教育学部卒業生の進路は多様です。
齋藤 めぐみさん 学習授業論ゼミ(2021年度卒業)
勤務先:弟子屈町立弟子屈中学校 教諭
【仕事】3学年(計5クラス)の国語の授業を担当しています。校務分掌業務は、総合学習や行事などの学年の業務、通知票発行やテスト印刷など。また、放課後や土日は吹奏楽部の指導を行っています。
教員を志望しており、教員になるための知識だけでなく、心理学や社会学、行政などさまざまな視点から教育について考えたいと思い、北大教育学部に進学しました。卒論では、「文章(特に文学作品)を読む」ときに、初めて読む経験(初読)を大切にする実践方法である「一読総合法」の重要点、実際の授業でどのように取り入れるべきかなどについて研究しました。
教育学部の4年間で、生徒を見る視点や授業のあり方、社会と学校の関わりなど、幅広い分野で色々なことを考え、学びました。今でも授業の準備をするときには、常に卒論の内容を念頭に置いています。
日々、予想できないことが起きるのが教員の仕事の面白いところ。「この子達ならこのようなことを考えるだろう」と思っていても、その予想を上回る言葉が返ってくることが何度もあります。目の前の子ども達は日々変化しているので、教員の仕事に完成やゴールはありません。自分も子ども達と一緒に成長していけるよう、よりよい授業を目指し、研究し続けようと思っています。
「教育」は、「教えてあげる」という一方的なものではありません。相手に「教える」前に、自分が相手を「知る」必要があります。つまり、「教育」は「学ぶ」ことだと私は考えています。そしてそれは、教師だけが行うことではありません。人と人が関わり合うときは、必ずそこに「学び」があります。
どんな職業を目指していても、何も目指していなくても、教育学部で「学ぶ」ことは必ず人生を豊かにします。北大教育学部で「学び」について学んでみませんか?
大木 隆史さん 職業能力形成論ゼミ(2021年度卒業)
勤務先:日本放送協会(NHK) 福岡放送局コンテンツセンター制作 ディレクター
【仕事】テレビ番組を制作しています。上司に番組や企画の「提案」を提出し、採択されたら取材・ロケを行って、編集をして、番組を作ります。ディレクターとして、全ての過程の中心に立ち制作を進行しています。
高校時代は社会学にも教育学にも興味がありました。教育学部ではどちらの興味も叶えられそうだと思い進学を希望しました。そのような中、浪人を経験し、焦りも伴い「いい大学に入らないと不幸になる」と思い込んでしまいます。しかし、大学に入学して大学生活やアルバイト、ボランティアなどでの人との出会いを通し、自身が抱いていた「不幸観」は、狭い視野によるものに過ぎないと気がついたのです。
自分が人とのふれあいの中で気づきを得たように、テレビ番組を通して、他人の人生をのぞき見し、触れることができます。「自分も誰かの人生に揺さぶりや衝動を与え、前向きになってもらえるような番組を作りたい」と思い、テレビ局を志しました。また、落語研究会に所属し、夢中でネタを作り披露し笑ってもらったことも、この仕事に興味を持った動機です。
主に教育社会科学分野のゼミや講義の中で身につけた、自分の目に見える範囲よりももっと幅広い視野で、他者の立場に立って物事を考えようとする姿勢は、今の仕事に活きています。仕事の一番面白いところは、自身の持つ興味関心や社会に対する問題意識・そして自分の「好き」を追求できること。大変なことも多いですが、放送後の達成感はひとしおです。
数年間の大学生活を通して何を得られるのか、それは周りの誰でもなく、自分次第です。ぜひ、「自分は卒業するまでに何を成し遂げたいのか」を一度立ち止まって考えてみてください。私は、北大教育学部で4年間を過ごせてとても良かったと思っています!
卒業生の就職先は多様で、教師を始めとする教育に関わる専門的な職業だけでなく、公務員や一般企業を選ぶ人もいます。最近では一般企業を選ぶ人が主流になっていて、人材育成を始めとした人事・総務の部門に配属されることが多くなっています。
満保 裕太さん 運動生理学ゼミ(2017年度卒業)
勤務先:社会福祉法人黒松内 つくし園 児童養護施設黒松内 つくし園
【仕事】登校・掃除・学習・遊びなどの生活支援、家庭や学校・児童相談所・病院などの関係機関との連絡調整を通じて子どもの自立をサポートしています。
自分がやりたいことを見つけたいと思い、北大教育学部へ進学しました。北大教育学部は、規模の小さい学部なので、学年の垣根を超えて非常に仲が良く、先生方も親身に関わってくださいました。一緒に駅伝大会に参加したのは良い思い出です。
自分は多くのことで恵まれてきたと感じていたのと同時に、それとは逆の境遇で生活せざるを得ない人達がいるとも思っていたので、そういう人達を助ける仕事に就きたいと漠然とした考えを持っていました。3年次に家庭福祉分野の授業を受けた際、児童養護施設について知りました。
4年次になり参加した法人の説明会で、職場体験を勧められました。施設で知り合った子ども達からもらった「また会える?」の言葉が忘れられなく、就職を決めました。黒松内は人口3,000人にも満たない小さい町ですが、法人創設者の多大な貢献から福祉の考えが町全体に浸透しており、町自体にも大変魅力があります。
この仕事の魅力は、子どもの成長を身近で感じられること。苦労することも多い分、子どもと分かち合う喜びもひとしおです。 教育学部で、物事に多角的な視野を持つことを学びました。その学びが、例えば、子どもの問題行動があったとしても個人要因だけではなく、環境要因にも注目してより良い支援を考えることに繋がっています。
施設を退所した子が自信を持って社会に出ていけるようにすることが、仕事の目標です。 ぜひ、北大教育学部に来て、自分が本当にやりたいことを見つけてください!
井上 華さん 教育臨床心理学ゼミ(2021年度卒業))
勤務先:札幌家庭裁判所
【仕事】家庭紛争や非行問題の当事者や関係者と面接を行って、心理的な分析をしながら、紛争や事件の原因となった動機、人間関係、生い立ち、家庭環境などを調査し、問題解決のために必要な検討を行い、裁判官に伝える仕事です。必要に応じて、当事者に教育的な助言・援助を行なうこともあります。
大学入学時は、将来像が漠然としていたので総合入試文系で入学し、その後、アルバイトを通じてさまざまな子どもたちと関わった経験から、子どもの福祉のために心理学を活かせる仕事に就きたいと考えるようになりました。大学2年時に家裁調査官という仕事を知り、父母の紛争下にある、不適応状態にある等の理由で困っている子どもや、その家族に関わることができる仕事だと感じ、本格的に目指し始めました。
北大教育学部では、心理専門職の資格を取るための勉強ができるだけではなく、福祉学や社会学など、いろいろな観点から、社会の実情を学べるところが魅力的です。時には難しいケースに出会うこともありますが、問題の実情をより正確に理解するために、心理学だけではなく、貧困やジェンダーなど多方面から社会や人間について考えたことが役立っていると感じます。
この仕事では、幼児から高齢者まで幅広い年代の、さまざまな環境にある方と出会います。仕事を通じて学ぶことは多く、家裁調査官の仕事が自分自身の成長につながっていると感じます。また、当事者に働き掛けた結果、少しでも事態がより良い方向に向かうことがやりがいです。
北海道大学で4年間過ごせたことは、人生の財産だと、卒業した今でも強く思います。迷っている方がいれば、ぜひ北大教育学部に進んでみてください。きっと素敵な経験ができると思います。
修士課程修了者は、博士後期課程へ進む者と、高度な専門家・職業人として学校、病院、官公庁、諸施設などへ就職する者がいます。
H28年度 | H29年度 | H30年度 | R元年度 | R2年度 | R3年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|
進学 | 7 | 7 | 11 | 5 | 4 | 7 |
就職 | 23 | 12 | 24 | 21 | 26 | 23 |
その他 | 15 | 15 | 14 | 12 | 15 | 12 |
修了者数(合計) | 45 | 34 | 49 | 38 | 45 | 42 |
大村 龍之介(2016年度 修士課程修了)
所属:生徒指導論
勤務先:東京都庁(事務)
学部時代は北大文学部で、若者言葉の言説について理論的な研究をしました。大学院でさらに、若者について教育との関 連で社会学的観点も含めて調査主体の研究をしたいと思い、 北大教育学院に進学しました。
修士課程では、高校の鉄道研究部に所属する子どもたちが、どのような理由で部活動に関わり継続しているかについてインタビューを行いながら解明する研究をしました。研究を通して、社会で生活されている方や社会そのものに対しての偏見や思い込みをなるべく排除して捉える視点や、得られたデータを整理し示唆を与えるものにしていくスキルを得ました。このスキルは、就職後、地域の課題を中立的に捉え、多方面に働きかけていく際に重要なものであると考えています。学問は現実の課題や現場の実践に示唆を与えるものですが、そういった示唆を具体的な改善に結びつくように接続させることができるようにしていきたいです。
北大教育学院は研究フィールドが多様であるばかりか、大学院までの経歴が様々な人が集まっています。そのような方々との貴重な出会いを通じて考え、悩み、それでもなんとか前に進んでいこうとする。そんな経験を通じて、修了後には入学前とは違った自分の成長が得られると思います。是非、北大教育学院で、色々な先生方や院生の話を聞いて自分が何をしたくて、実際にできるのかその可能性を探してみてください。
博士後期課程を修了者の多くは、大学や研究所等の教員、研究職・専門機関等の専門職についています。
H28年度 | H29年度 | H30年度 | R元年度 | R2年度 | R3年度 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
就職 | 大学・短大 | 4 | 5 | 7 | 2 | 6 | 2 |
中学・高校等の教諭 | 1 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 | |
病院 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
民間企業等 | 1 | 1 | 0 | 0 | 2 | 1 | |
その他 | 4 | 1 | 2 | 7 | 2 | 4 | |
修了者数(合計) | 10 | 8 | 9 | 10 | 11 | 7 |
奥村 安寿子(2014年度 博士後期課程修了)博士(教育学)
所属:特殊教育・臨床心理学
勤務先:国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 知的障害研究部
修士課程への進学は、学部に入学した当初からほぼ決めていました。教育や子どもに関わる研究をし、専門的な知識や経験を得たいと思っていました。
大学院で所属していた特殊教育・臨床心理学研究グループ※ では、基礎研究(認知心理学や脳科学の手法を用いた実験研究)と臨床実践(発達障害のある子どもの学習・生活・対人支援)の両方を展開していました。私もその2つを両立させることを目 指していましたが、修士の時に臨床実践に多くの時間を費やし、基礎研究が十分に出来ませんでした。そこで、本格的な基礎 研究を行うために、博士後期課程へ進学しました。
このように臨床とのつながりを見据えながら基礎研究を進めてきたことが、今の仕事に役立つ重要な思考回路を作ったのだと思います。
教育の現場から離れた場所での基礎研究は、一見実用的な意 義を欠くように見えるかも知れませんが、教育の様々な対象や現場に幅広く適用できる知見を生む可能性を持っています。北大教育学院では、基礎研究だけでなく、実践の場や現場経験者 と関わる機会も多いので、研究と実践の両面から教育に対する 専門性を高めていけると思います。
※現在の視知覚認知過程論と特殊教育・臨床心理学を合わせたものに相当
石原 暢(とおる)(2016年度 博士後期課程修了)博士(教育学)
所属:体力科学
勤務先:北海道大学大学院 教育学研究院専門研究員
北大理学部数学科に所属していた学部時代に、テニスインストラクターのアルバイトを通してスポーツと子どもの発育・発達の関連に興味を持ち始めたことから、修士課程から北大教育学院に進学しました。
博士論文は、テニススクールに通っている小中学生を対象 に、テニスレッスンが高次認知機能(問題解決、論理的思考、計画など目標志向的な制御を支える機能)へ及ぼす効果についてまとめました。まさにスポーツと子どもの発育・発達の関連についての研究を行うことができ、充実した研究生活でした。
博士後期課程修了後は、北大教育学研究院専門研究員として研究を継続し、博士課程で行った研究を発展させていきます。
北大には、先生の授業を補助するティーチングアシスタント制度(TA)や先生の監督のもと授業を一部主導で行うティーチングフェロー制度(TF)があります。将来的に大学教員を目指す人にとって、TAやTFを通して学生教育の実践経験を積むことは、大学教員になった後の授業の質の向上につながると感じています。また、北大教育学院は、幅広い分野から構成されているので、様々な分野の研究者と交流を図り、自身の研究分野以外の知識も得ることが出来ます。北大教育学院は、将来、大学教員・研究者を目指す人にとって非常に充実した環境であると実感しています。