教員の紹介
更新日:
2020年03月02日
E-mail
kawata*edu.hokudai.ac.jp *を@に置き換えてください。
メッセージ
子どもの発達が実践の中でどのように展開していくのか、そして、子どもが育つとともにそのコミュニティも発達(発展)していくという「個と共同体の不可分の発達連関」を考えてみたいと思います。発達心理学と実践(保育や子育て)の両方に関心がある人をお待ちしております。
専門領域
発達心理学、保育学
研究テーマ
保育実践における「子ども理解」と「発達理解」に関する理論的・実証的研究
研究の内容を表すキーワード
乳幼児、発達、保育実践、子育て、子ども理解、自己、他者、環境、文化過程、生態学的視点
研究の詳細な内容
「子どもを理解する」とは、今日では当たり前のように聞くフレーズです。しかし、当たり前そうなものほど、考え始めると意外に厄介なもので、その歴史的・社会的意味や実践における役割や機能を反省的に考察する作業が欠かせません。例えば、心理学を学ぶと、それまでの何気ない日常が、心理学的概念による色づけで理解できるようになり、新鮮な気分になります。しかし、場合によっては、心理学的理解が、実践における子ども理解を狭くさせることも起こりえます。心理学(発達心理学)ならではの子ども理解があると同時に、そうした客観科学とは異なる様式による子ども理解の知の体系もあり得ます。それが、実践の知としての子ども理解です。私はこれまで、保育所や幼稚園等でのフィールドワークや、保護者や子育て支援者との対話を通して、心理学的な子ども理解を相対化する研究を重ねるとともに、保育者自身の意識に上りにくい子ども理解の背景やそれを規定する条件についても関心を持っています。
現代の子ども理解において、「発達」(development)ほど大きな影響を与えてきた観念はありません。しかし、20世紀に発展し普遍性を追求してきた発達理論は、その後、ある時代の社会・文化・歴史的な段階や多数派の論理・前提と親和的であったことが指摘されるようになり、”反省”を迫られました。20世紀の終わりごろからは、”反省”を超えて、新たな社会モデルの模索とともに発達観と発達理論の再構築が世界中ではじまってます。発達観とは、「人が育つこと」に関する実践と知識の体系を意味します。発達の根拠を個人の能力発達に求める理論もありますし、コミュニティへの参加を通した役割の変化として定義する理論もあります。唯一正しいものがあるわけでもなく、それぞれの発達観にはその背景としての人間観や社会観等が想定されます。
乳幼児発達論研究室では、研究および実践で自明視されがちな「子ども理解」や「発達理解」を問いなおす批判的精神を大切にしながら、それでもなお現代を生きる乳幼児とその成長を支えようとする保育者や保護者をエンパワーする研究を探っていきたいと思います。
略歴
東京都立大学大学院人文科学研究科(心理学専攻)博士課程 単位取得満期退学(2005年),博士(心理学)
香川大学教育学部幼児教育講座 講師(2005年)
香川大学教育学部幼児教育講座 准教授(2007年)
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター 准教授(2010年~)
主な研究業績
【受賞】
第52回日本保育学会保育学文献賞(2021年)
第16回日本発達心理学会学会賞(論文賞)(2007年)
発達科学研究教育奨励賞(2005年)
【著書等】
<単著>
<編著・共著・翻訳書>
マーガレット・カー&ウェンディ・リー/大宮勇雄・塩崎美穂・鈴木佐喜子・松井剛太監訳,磯部裕子・川田学・菊地知子・矢萩恭子訳(2020)学び手はいかにアイデンティティを構築していくか:保幼小におけるアセスメント実践「学びの物語」.ひとなる書房 書籍情報
加藤弘通・川田学編(2020)心理学概論:歴史・基礎・応用. ミネルヴァ書房.
心理科学研究会編(2019)新・育ちあう乳幼児心理学:保育実践とともに未来へ .有斐閣(編集委員).
小西祐馬・川田学編(2019)遊び・育ち・経験:子どもの世界を守る(シリーズ子どもの貧困2).明石書店 書籍情報
大宮勇雄・川田学・近藤幹生・島本一男編(2017)どう変わる? 何が課題? 現場の視点で新要領・指針を考えあう.ひとなる書房 書籍情報
スレーター&クイン/加藤弘通・川田学・伊藤崇監訳(2017)発達心理学・再入門:ブレークスルーを生んだ14の研究 新曜社 書籍情報
松本博雄・常田美穂・川田学・赤木和重(2012)0123発達と保育 ミネルヴァ書房 書籍情報
【論文・章執筆】
川田学(2021)総論 問題としての子ども理解.発達,168,2-8.
高橋真由美・川田学(2021)学生の子ども理解に関する学びに影響を与える要因:幼稚園教育実習の経験との関連から.子ども発達臨床研究,15,11-30. DOI
川田学(2020)“COVID-X”への想像力:マスク・行事・子どもの感情.季刊保育問題研究, 306, 18-29.
Ong,M.Y.L., Ho,K.L.C., Kawata,M., Takahashi,M., & Mizuno,K. (2020) Understanding of base-10 concept and its application: a cross-cultural comparison between Japan and Singapore. International Journal of Early Years Education DOI
川田学(2019)発達をめぐる真摯な問い.発達,160,38-42.
川田学(2019)乳幼児の遊びをめぐる「貧困」とは何か:この20年余りで子育て・保育を困難にしてきた構造的背景をめぐって.臨床教育学研究,7,34-50.
川田学(2019)「発達」と「支援」が創造的に出会うには(須田治編『生態としての情動調整:心身理論と発達支援』金子書房,pp.17-27) 書籍情報
川田学(2019)「保育所の設立と守姉」(根ケ山光一・外山紀子・宮内洋編著『共有する子育て:沖縄多良間島のアロマザリングに学ぶ』金子書房,pp.48-62) 書籍情報
川田学(2019)「異年齢」において何を見るか:発達論への展望.子ども発達臨床研究,12(特別号),55-64. DOI
川田学(2018)エコロジカルシステムとしての「保育」の評価試論 保育学研究,56(1),21-32. DOI
川田学(2018)異年齢期カップリングの発達学:<イヤイヤ期>を生み出す関係的力学の考察 小児の精神と神経,58(2),97-107.
吉川和幸・上村毅・川田学 (2017)「信頼モデル」による記録、評価は障害児保育実践をどう変えるのか:「学びの物語」作成による半年間の保育実践からの検討.保育学研究,55,55-67. DOI
川田学(2017)その日をつくることと、続いていく/続けていくこと:むくどりホームにおける「導かれた参加」の分析 子ども発達臨床研究,第10号(特別号),89-107.DOI
川田学・白石優子・根ケ山光一(2016)子育ての手をめぐる発達心理学:沖縄・多良間島の子守と保育から考える 発達心理学研究, 27(4),276-287. DOI
Ong,M.Y.L, Kawata,M., Takahashi,M. (2016). The relation between frequently exposed context in the early childhood settings’ mathematical activities and arithmetic skills : a cross-cultural comparison of 6-year-old children in Singapore and Japan. International Journal of Education and Research, 4(5), 259-272.
Ong,M.Y.L, & Kawata,M (2016)Examining the Effect of Playing an Arithmetic-based Game- “Chopsticks” on the Arithmetical Competencies of 5-year-old Children in Singapore. International Journal of Learning, Teaching and Educational Research, 15(6), 102-113.
川田学(2015)心理学的子ども理解と実践的子ども理解 障害者問題研究,43(3),18-25.
川田学(2015)園庭における2本の棒の観察:保育環境における準遊材的なものについて 心理科学,36,54‐66.DOI
川田学(2014)年齢,獲得,定型:発達心理学における『発達』の前提となっているもの 子ども発達臨床研究,6,7-14. DOI
Doi-Hata.T., Hanyu,K., & Kawata,M.(2014)Can home heal worn out parents? Japanese Psychological Research, 56, 373-384. DOI
川田学(2011)自閉症幼児における役割交替模倣と自他認識の発達:定型発達児との比較を通して」北海道大学大学院教育学研究院紀要,113,55-80. DOI
川田学(2011)他者の食べるレモンはいかにして酸っぱいか?:乳児期における擬似酸味反応の発達的検討 発達心理学研究,22,158-167. DOI
川田学(2011)乳幼児発達研究の動向:いくつかの『前提』への気づきを添えて 教育心理学年報,50,68-77. DOI
主な公的委員
文部科学省・幼児教育課幼児教育の教育課題に対応した指導方法等充実検討会議委員
文部科学省・幼児教育課幼稚園教育指導資料編集協力者会議委員
北海道・子どもの未来づくりセミナー実行委員会委員
札幌市教育委員会・幼小連携協議会委員
香川県教育委員会・幼児教育振興アクションプログラム策定協議会会長
高松市立幼稚園・保育所一体化検討委員会指導助言者
高松市立幼稚園の在り方に関する懇談会副会長
三豊市就学前教育・保育研究推進事業アドバイザー 等
所属学会
日本発達心理学会,日本教育心理学会,日本心理学会,日本保育学会,日本赤ちゃん学会,こども環境学会,心理科学研究会,全国幼年教育研究協議会,日本乳幼児医学・心理学会
主な担当授業
【学部】教育学概説(発達と学習),乳幼児発達論,教育心理学(教職),教育心理学実験実習,専門演習
【大学院】教育心理特論(乳幼児の発達と保育),教育心理学調査実験
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