北海道大学/大学院教育学研究院/教育学部
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専門分野

身体文化論

学部所属

健康体育学分野

学院所属

身体教育論講座

メッセージ

前ヴィクトリア時代の英国におけるスポーツ史には現在のスポーツ文化と同様の数多くの興味深い事実が含まれています。その時代のスポーツ・ジャーナリスト、ピアス・イーガンは、カナダの歴史社会学者、次いでニュージーランドの研究者によって探究され、その後、日本でも研究がなされました。そのことは土着の研究者には盲点となる興味深い視点を外国の研究者が提示してきたことを示しています。イーガンについて研究した私の初期の研究もこれに倣うもので、加えて日英比較の重要性も気づかせるものでした。 これまで行ってきた研究は、主として支配的な文化に対する抵抗の論理を炙り出すもので、日本における近代国民形成に果たした身体文化の役割と西欧との文化融合の経緯を細分化して捉えることに力を注ぎました。最近は、隠蔽された政治的事実を民衆文化やスポーツ文化が継承するものであることや、我々自身が何者であるのかを確証づけるメカニズムと身体文化の関係について論じています。身体文化はその際の有効なレンズになり得ます。同時に我々が社会を包括的に認識する視野や国籍、民族を超えた視点や偏見を炙り出す上で有効な手立てを導いてくれるという意味で大変興味深い視野を与えてくれます。

 専門領域

身体文化論 身体文化史 体育史 スポーツ史

研究テーマ

イギリススポーツ史、民衆スポーツ史、スポーツジャーナリズム史、大英帝国主義および大日本帝国主義を通じた日英比較スポーツ史、ナショナリズム、ファシズム、ジェンダーとスポーツの関係史他

研究の内容を表すキーワード

民衆スポーツ、前ヴィクトリア時代のスポーツ、スポーツジャーナリズム、帝国主義・ナショナリズム・ファシズム・ジェンダーとスポーツ

研究の詳細な内容

 主要論文は、英国の初期のスポーツジャーナリスト、ピアス・イーガン (1774-1849) に関するもので、彼がジャーナリズムの中からスポーツジャーナリズムをいかに独立・発展させたのかについて論じています。具体的には摂政期イングランドにおける政治文化の大衆化に関与した当時の急進主義者や急進主義的大衆ジャーナリズムが与えた影響と19世紀初頭の「英国的自由」の観念について検討を行いました。
 その中身は「民衆とは何か」、「民衆の権利」とは何かということと民衆スポーツ文化の関係を明らかにすることに等しいものです。同時に19世紀初頭の政治と身体文化の関係は、20世紀におけるスポーツ学の創始と関連があることを指摘しました。そうした議論は「スポーツ叙述の発展に関する政治的分析―初期のラディカルからニューレフトまで-」 “Political Analysis of the Historical Development of Sports Writing in Britain from the Early Radicals to the New Left”としてまとめています。
 このほか「第二次世界大戦期の日本における身体と草の根のファシズム-身体のメカニズムにおける天皇のトポス」“The Body and Grass-roots Fascism during World War II: ‘the topos’ of the Emperor in a personal-body-mechanism in Japan.”、かつて大英帝国領であったアイルランドのダブリンにある国民的墓地とボクシングの歴史についてまとめた「急進主義者とスポーツ-’ブリーズエーカー’、ジョン・イーガンとピアス・イーガン」“Radicals and Sport: ‘Bully’s Acre’, John Egan and Pierce Egan’s Boxiana.”について執筆。近年、大英帝国主義と大日本帝国主義の比較検討を行い、両国おける「良妻賢母」、「質実剛健」の規範と身体文化との関係、その「創られた伝統」と文化帝国主義の側面について記した論文を公表しています。

略歴

奈良女子大学文学部教育学科卒(1989)、奈良女子大学大学院人間文化研究科比較文化学専攻修了(博士・学術、1995)、山口大学講師・准教授・教授(1999-2014)を経て、現在、北海道大学大学院教育学研究院教授(2015-現在に至る)

主な研究業績

<主 著>

  • 『前ヴィクトリア時代のスポーツ-ピアス・イーガンの「スポーツの世界」』不昧堂、1996年。
  • 「第1章ジェントルマン・アマチュアとスポーツ―一九世紀イギリスにおけるアマチュア理念とその実態―」望田幸男他監修 シリーズ ヨーロッパの探究第8巻、『スポーツ』ミネルヴァ書房、2002年、4-39頁。
  • 「体育・スポーツ史の地平を考える―今、何が問われているのか―」小田切毅一監修、三井悦子・池田恵子編著『いま奏でよう、身体のシンフォニー―身体知への哲学・歴史学的アプローチ』叢文社、2007年、12-34頁。

“The Body from the Perspective of the Historical Phase in Society” Michael Chia and Jasson Chiang eds., Sport Science in the East: Issues, Reflections and Emergent Solutions,World Scientific Publishing Co., Singapore and USA, 2010, pp.219-230.
“From Ryosaikenbo to Nadeshiko: Women and Sports in Japan”, in: Routledge handbook of sport, gender and sexuality edited by Jennifer Hargreaves and Eric Anderson, Routledge: London and New York, 2014, pp.97-105.
他多数

所属学会

体育史学会、スポーツ史学会、国際体育スポーツ史学会(ISHPES)、英国スポーツ史学会(BSSH)、西洋史学会

担当する授業

教育学概説、身体文化論、専門演習、身体教育特論(スポーツ史)他

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