北海道大学/大学院教育学研究院/教育学部
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研究フォーラム「秋葉原事件から日本の青年期の問題をさぐる」開催報告.

2012年04月11日 おしらせ

4月9日(月),人文社会科学総合教育研究棟W103におきまして,教育学研究院の研究フォーラム「秋葉原事件から日本の青年期の問題をさぐる」を開催致しました。今回の企画は,2011年に上梓された中島岳志氏の「秋葉原事件:加藤智大の軌跡」(朝日新聞出版)を題材に,日本の青年期問題についての教育学的な議論を深めることを目的に開催されました。中島岳志氏(北海道大学公共政策大学院・准教授)の基調講演を皮切りに,児童精神科医の立場から田中康雄氏(前・教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター・教授),教育学の立場から浅川和幸氏(教育学研究院・准教授),社会学の立場から石岡丈昇氏(教育学研究院・助教)と中島氏によるパネルディスカッションへと展開し,活発な議論が行われました。

中島氏は,事件の背景・要因・動機を分かりやすい言説で思考停止する前に,加藤被告の事件当日に至るまでの軌跡のディテールに目を向けること,そしてディテールに向かい合えば合うほど,加藤被告の中に我々自身を見ることになるということを強調されました。

パネルディスカッションでは,加藤被告と我々の連続性と断絶について,ソーシャルメディアそのものが生産する孤独,母子(親子・家庭)関係と青年期問題との関連,コミュニケーション能力,自己(アイデンティティ)における身体性などのテーマで議論が進み,最後は秋葉原事件に象徴される行き詰まり感を弱める公共政策の視点としての「ナナメの関係」についても言及されました。中島氏は,加藤被告の「現実はタテマエ,ネットはホンネ」という言葉がもつリアリティへの着目を促し,200年前にジャン・ジャック・ルソーが述べた「透明な関係」の実現,すなわちネットというテクノロジーの出現によってネットにこそ「ホンネ」の世界・本当の自己があるとのある種の幻想の中に,加藤被告も,また実は我々の多くも生きているのではないか,しかし,身体性を伴わない自己は,容易に「ナリスマシ」に乗っ取られてしまう脆弱さをもっているという矛盾も露わであることについて言及されました。

平日の夕方にも関わらず,会場には学生・院生,教職員の他,学外からも社会人や他大学の学生など120名ほどの方がお越しくださいました。18時半から21時過ぎまで3時間弱という限られた時間でしたが,会場は熱気に包まれ,終了後さっそく第2弾を望む声が多く聞かれました。

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