北海道大学/大学院教育学研究院/教育学部
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専門分野

特殊教育・臨床心理学

学部所属

教育心理学分野

学院所属

臨床心理学講座

メッセージ

大多数の人たちと異なる特性があるということで、生きづらさに直面している子どもたちや人たちがいます。彼らへの支援を認知心理学や臨床心理学の視点から考えてみませんか。彼らの生きづらさがとても強いとき、その困難さは「障害」と呼ばれることもありますが、彼らの存在を深く見つめ、支援を究めていくことで、彼らとつながる連続線が見えてくるはずです。僕は、そこにあるのは「人間の多様性」だと感じています。

専門領域

認知心理学、臨床心理学、特別支援教育

研究テーマ

  1. ASDの対人認知特性の認知心理学的検討
  2. 知的・発達障害児者の心理・教育的臨床支援
  3. 知的・発達障害児者の地域支援体制構築
    (注:ASDとは自閉スペクトラム症を意味する)

研究の内容を表すキーワード

  1. 自閉スペクトラム症の認知特性
  2. 情緒・行動問題の評価と支援
  3. 多職種の支援連携ツール

研究の詳細な内容

 大多数の人たちと異なる特性を持っている人たちが、私たちとどのように異なっているのかだけではなく、むしろ、その「異なり」をどのようにしたら縮めていけるのかということに軸を置いて研究と実践を進めています。

○ASDの人たちの認知特性研究
 対人交流における認知特性の研究を行っています。認知心理学の実験パラダイムを用いて、反応時間や正答率といった遂行測度に加えて、アイトラッカーで記録した課題中の視線の動きも測度として、対人交流場面における認知特性を分析・検討しています。
これまでの成果ですが、
(1)表情感情と音声感情の認知課題において課題の複雑さが減じるとASD群と統制群の遂行と視線行動の差異も減じること、
(2)会話する二者に生じる同調性の知覚課題においてはASD群は遂行に時間はかかるものの正答率は統制群と有意に異ならないこと、
(3)交互拍手の遂行の滑らかさと同調性知覚のよさが相関すること、といった結果が得られています。これらの研究結果に基づいて、現在は、個々人のASD特性の濃淡と課題遂行に伴う環境要因が対人交流の質に及ぼす影響について検討を進めています。
○知的・発達障害の臨床支援研究(および臨床実践)
 園や学校、地域生活など、場面は様々ですが、知的・発達障害特性の拗れによって困難さに直面している人たちの支援を行っています。論文や学会報告としては、
(1)就学前のASD幼児を対象に、彼らにとって理解の難しい社会的状況の意味合いを絵本のような媒体を作成して伝達し、彼らの意味理解を助け、当該場面での適応を支えた研究、(2)家庭で様々な問題行動を呈していた幼児を対象に、母親のレスパイトケアを行いながら、TEACCHとABAを相互補完的に用いた問題行動への対応方法を母親に伝達して、家庭での適応を回復した研究、(3)ADHDと読み困難が併存している小学生を対象に、文節間にスラッシュを入れた読み教材と入れない読み教材を交互に用いることによって読みが改善すると同時に、一注視の情報処理量が増大したことを示唆する視線行動の変化が読み行動に生じたことを捉えた研究、等があります。(1)実践支援としては、ASD診断のある高校生集団を対象に、自らと他の参加者の「よさ」と「気になるところ」を相互に捉えつつ、セラピストの介入を通じて全員に共通する特徴とASDを重ねて理解し、ネガティブではないASDの自己認知を試みた実践、(2)学校で激しい行動問題を示す児童に対して行動問題の原因を外在化し、その外在化された原因に対して児童と教員が一致団結して対応する体制を構築することで児童と教員の対立構造を協力構造に変容させ、当該児童の適応を支えた実践、等があります。
○地域での多職種支援連携の研究および実践
 知的・発達障害の困難特性は生涯にわたって継続するため、当該児者の家族と様々な職種の支援者が縦(継時的)と横(共時的)の連携体制を構築していく必要がある。そのためのツールとしていわゆる支援ファイル(子育て支援ファイルや生活支援ファイルなどと呼ばれるもの)があります。これは出生後(時には出生前から)からの子どもの育ちを記録して時々の支援に備えるものですが、前所属である北海道教育大学旭川校時代に旭川を中心とした上川地域で「障害の有無にかかわらず子どもの育ちを応援するファイル」を作成し、旭川地域の児童デイサービスや保育園、上川管内の多くの市町村で(独自のアレンジもされつつ)活用されています。本支援ファイルをについては、いくつかの論文やエッセイでその活用に伴う評価アンケートの結果や活用例を紹介していますが、こういった「障害の有無を超えた」支援ファイルを作成した意図は、「困難性がわかりづらい知的・発達障害の子供とその親の育ちの経過」から考えて「子育て支援からの発達支援、そして発達障害支援」が必要と感じたからです。

略歴

1992
北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程
(単位取得退学)
1992-2002
重症心身障害児施設 旭川荘療育センター
旭川児童院 療育課勤務
2002-2015
北海道教育大学旭川校 教育発達専攻
特別支援教育分野 助教授
2006 准教授 / 2008 教授
2015-
北海道大学大学院教育学研究院 臨床心理学講座
特殊教育・臨床心理学教室  教授

主な研究業績

○主な論文

  • 安達潤(1993) 重症心身障害児の触覚防衛反応に対する認知的アプローチ -随伴制理解の促進による刺激接触予期成立の効果-, 重症心身障害研究会誌,18(1),31-34
  • 安達潤、古川宇一(2003) 自閉症児の家庭生活トラブルを軽減するための支援 -養育者の問題対処能力を上げる働きかけについて-, 北海道教育大学教育実践センター紀要,4,221-230
  • 安達潤、笹野京子(2003) 高機能広汎性発達障害の就学前女児が示すパニック反応に対する社会的ストーリーの適用, 小児の精神と神経,43(3・4),241-247
  • 安達潤、行廣隆次、他(2006) 広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度(PARS)短縮版の信頼性・妥当性についての検討, 臨床神医学,35(11),1591-1599
  • 安達潤(2011) 地域での発達障害に対する一貫した支援のあり方について, 児童青年精神医学とその近接領域,52(3),280-288
  • 安達潤、齊藤真善、他(2012) アイトラッカーを用いた高機能広汎性発達障害者における会話の同調傾向の知覚に関する実験的検討, 児童青年精神医学とその近接領域,53(5),561-576
  • 安達潤(2013) 発達障害とアセスメント, 児童青年精神医学とその近接領域,54(3),269-276
  • 安達潤(2013) 児童心理,2013年12月号 臨時増刊 No.978(18),64-70
  • 安達潤、田中康雄(2016) 発達障害研究 , 38(1), 60-78  育ちの困難さに気づいた時期によって発達障害児の保護者の乳幼児健診に対するニーズは異なるか?
  • 安達潤、内山登紀夫(2016) 児童青年精神医学とその近接領域,  57(1) 98-103  16歳以降にASDが把握された高機能群のPARS(PARS-TR)の特徴.
  • 安達潤(2018) 発達障害研究, 40(4), 336-351  ICFの視点に基づく情報把握・共有システムの研究開発 -知的障害・発達障害児者支援における多領域連携の実現に向けて- 

○主な著書

所属学会

日本児童青年精神医学会、日本小児精神神経学会、日本発達障害学会、日本特殊教育学会、日本LD学会、日本自閉症スペクトラム学会、日本教育心理学会、INSAR(the International Society for Autism Research)、など

担当する授業

○学部
特別支援教育概論、心理検査論、発達障害援助実習、専門演習Ⅰ・Ⅲ、など
○大学院
臨床心理学調査実験、臨床心理学面接特論、学校臨床心理学、など

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