北海道大学/大学院教育学研究院/教育学部
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専門分野の紹介

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身体教育論講座

身体文化論

テーマ

イギリススポーツ史研究、日英比較スポーツ史研究を中心とし、体育・スポーツを巡る権力関係の文化史に着目する。分析視角のキー・コンセプトは帝国主義、ファシズム、ジェンダー・バイアス、伝統と近代、ローカリズムおよびグローバリズム、メディア、外交、ナショナリズムおよびインタナショナリズム等であり、個別トピックからのアプローチも行う。

紹介

 スポーツは語源通り、西欧由来のものであり、その歴史を探ることはスポーツの伝播と受容過程を明らかにすることに等しい。その際、時代の権力がどのように作用したのかについて学ぶ必要がある。また、近代スポーツの祖国であるイギリスにおいてでさえ、19世紀に生じた質的、量的、構造的変化を無視することができない。そのため、スポーツ文化の歴史研究とは、変容の動機に関わるキー・コンセプトを通して分析することに他ならない。さらに、地理的拡大の問題を考慮すれば、3次元(時間軸・場所・変容の動機)を通しての考察ということになる。たとえば、「前ヴィクトリア時代のイギリスにおけるスポーツ・ジャーナリズム」について探究するということは、近代前夜のイギリスでなぜスポーツが活字化され、その根拠が近代スポーツの特性とどのようにかかわり、今日のスポーツ文化の持続と変容の問題を映しているのかを問うことに等しい。

教員の紹介

教授・池田 恵子 
 研究の原点はピアス・イーガン研究(『前ヴィクトリア時代のスポーツ―ピアス・イーガンの「スポーツの世界」―』(不昧堂、1996)である。急進主義的政治文化と大衆ジャーナリズムが交錯する中で生まれたロンドンのジャーナリスト、イーガンのボクシング報道やスポーツ擁護論は、近代スポーツに対して抵抗の論理を示すと同時に近代スポーツへと受け継がれた世界の誕生を意味するものであった。続く研究では、「英国的自由」の観念や「民衆とは何か」ということが初期のスポーツ報道に関与していたことを発見した。この急進主義ジャーナリズムは20世紀のスポーツ・スタディーズやカルチュラル・スタディーズの源流となった政治的ラディカル、新左翼経由の社会史研究に影響を与えた。そのメッカ、ウォーリック大学社会史研究所で生まれた英国レジャー史・スポーツ史研究に触れるため、すでに1997-98年にかけて渡英し、同社会史研究所の研究員として滞在していたが、12年後の2010年には、その流派の伝統を受け継ぐドゥモンフォート大学国際スポーツ史・文化研究所で学んだ。現在は日英比較スポーツ史研究を主宰。これまで多くのスポーツ史研究は一国史としての詳細な説明を伴ったが、これからの研究は国家の境界を超えた共通史、世界史としてのスポーツ史の探究が必要であると考えている。現在はそうした観点から帝国主義とスポーツの問題を大英帝国主義と日本帝国主義との関連から紐解くことに関心があり、英国ヴィクトリア時代の理想の女性像が日本の良妻賢母主義に与えた影響を女子体育を通して明らかにした“ ‘Ryōsai-kembo’, ‘LiberalEducation’ and Maternal Feminism under Fascism : Women andSports in Modern Japan.”( The International Journal of the Historyof Sport, vol. 2 7 no. 3 , 2 0 1 0) や“British Cultural Influenceand Japan: Elizabeth Phillips Hughes’s Visit for EducationalResearch in 1901-1902.”( The International Journal of the Historyof Sport, vol.31 no.15, 2014)を刊行している。
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