北海道大学/大学院教育学研究院/教育学部
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専門分野の紹介

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臨床心理学講座

特殊教育・臨床心理学

テーマ

知的障害・発達障害のある子どもから大人までの適応困難に対する心理学的支援の研究 -認知心理学・臨床心理学・地域臨床の視点から-

紹介

 専門分野名を「特殊教育・臨床心理学」としたことには二つの理由がある。
 一つは、「多数派からの差異」を周囲の者と当事者が共に感ずることによって「障害」が輪郭化するという事実と関係する。これは人間における「特殊性」の問題であり、当事者と周囲の者が共にその「特殊性」の実際を見極め、どう受けとめるかを思惟し実践していく営みが特殊教育だと考えるからである。もう一つは、当事者も周囲の者も同じ世界を生きているという事実と関係する。人間の多様性はこの世界でさまざまにかかわり合い、繋がりや衝突をもたらし、相対する双方に心理的な課題が生じる。これは「障害の有無」を越えて臨床心理学の対象となる普遍的事態だからである。特殊教育と臨床心理学は特別支援教育の背景に存在するのである。
 本分野での教育・研究活動は「知的障害・発達障害の人たちへの支援」を軸とし、実践との繋がりを重視するため、その研究アプローチはやや広くならざるを得ない。例えば、当事者の認知特性(特殊性)にかかわる実験研究、知的・発達障がい児の療育実践、当事者や家族の心理臨床、学校コンサルテーションや地域支援ネットワークの研究等である。しかし最終的には、一人一人の臨床的視点とフィールド感覚が成果の鍵になると思う。

教員の紹介

教授・安達 潤 
 子どもから大人までの知的障害・発達障害の人たちとその家族への支援を考えている。悩み深き北大大学院生時代を経て、障害児者施設の職員を約10年、北海道教育大学教員を約10年経験したことから、現在は、研究者と臨床実践者のモザイク様状態となっている。必要な支援につながると感じた研究と実践には、自らの力量が許す範囲の中でさまざまにかかわってきたため、何でも屋の観あり。但し、臨床支援の軸は揺らいでいない(と信じている)。現在の研究および実践は以下の通り。認知心理では「アイトラッカーによる自閉スペクトラム症の対人認知研究」がテーマで、定型発達者と自閉スペクトラム症者の差異を検出するのではなく、どのような環境条件がその差異を縮めるか(互いに近づきうるか)に関心がある。心理臨床では自閉スペクトラム症青年の集団自己認知支援、自閉スペクトラム症の人たちの社会性支援や心理面接の研究と実践を進めている。地域臨床では「子育て支援から発達支援・発達障害支援をつなぐ支援ファイル」がテーマで、上川地域での実践研究を進めている。また厚生労働省の発達障害支援施策に採用された自閉スペクトラム症の評定尺度であるPARS の開発にかかわった。

<主な論文>
安達潤、笹野京子(2003). 高機能広汎性発達障害の就学前女児が示すパニック反応に対する社会的ストーリーの適用. 小児の精神と神経,43(3・4),241-247
安達潤・行廣隆次・他(2008). 広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度(PARS)短縮版の信頼性・妥当性についての検討.精神医学,50(5),431-438.
安達潤(2011). 地域での発達障害に対する一貫した支援のあり方について. 児童青年精神医学とその近接領域,52(3),280-288
安達潤・齊藤真善・他(2012). アイトラッカーを用いた高機能広汎性発達障害者における会話の同調傾向の知覚に関する実験的検討. 児童青年精神医学とその近接領域,53(5),561-57.
<著書>
発達障害の臨床的理解と支援3 学齢期の理解と支援 特別ではない特別支援教育をめざして(石井哲夫 監修,安達潤 編著;金子書房)

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