北海道大学/大学院教育学研究院/教育学部
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専門分野の紹介

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臨床心理学講座

教育臨床心理学

テーマ

人間の成長と回復への支援を探究する臨床心理学の研究

紹介

地域社会において、また日常の暮らしの中で生じる、心理臨床・発達支援・教育臨床の様々な課題に関心を寄せ、教育臨床心理学・心的外傷理論などの観点から共同研究をおこないます。思春期・青年期以降における諸困難の発生、そして心理臨床・医療・福祉など、ケアの場におけるその回復・支援について、支援の担い手が抱える課題とは何か、当事者を取り巻く環境の課題とは何か、常に当事者からの問いを大切にしながら問題を立ち上げ、実践的研究と理論的研究を行います。
人が育ちやがて老いてゆく過程のなかで抱える「生きにくさ」を、心理学的視点と生態学的視点から分析し、その人にとって実りある幸せな人生の構築に向けた支援を検討したいと思っています。当時者である人,養育者・支援者とコミュニティを含む支援の現場を研究フィールドとして研究を展開していきます。

求める学生像

臨床実践と研究のバランスをとることの難しさを知り、向き合い続けることのできる人を望んでいます。自らの臨床実践をひとりよがりにならずに対象化しさらに相対化して研究する冷徹な目と、理論研究や基礎研究から根気良く学びほぐすことのできる忍耐強さと、なにより当事者を中心に据えた温かな臨床のこころを保ちつづけることのできる研究者・支援者を育てたいと思っています。

教員の紹介

准教授・渡邊 誠
人間の精神的な安定に関与する要因は極めて多く、それらの絡まり合いによっては、誰もが安定が損なわれた状態になり得ます。そういった状態に陥っている相手に対する心理学的な援助の方法と実際についてを、研究テーマとしています。具体的には、力動論を基礎に置き折衷的な手法を取り入れた個人心理療法の過程、災害や虐待による心的外傷への心理療法的接近における問題点、学生相談という形態における支援の特徴、性的マイノリティの人たちに対する心理学的支援、といった問題を中心に考えています。

修士論文

●2019年度

    • 中学校における学級集団のダイナミズムが個人の成長に与える影響の考察-ある中学校の例から-
    • 当事者と当事者家族の手記を通じたうつ病の考察-闘病中の心理状態と回復過程に着目して-
    • 「私」にとっての自傷の意味-当事者たちによる「かたり」の臨床心理学的考察-
    • 生きづらさの中で自分らしく生きるプロセスについての検討-未婚女性へのインタビューを通して-
    • キャバクラ就労が与える心理的影響

●2020年度

    • 葛藤を抱えた青年の親子関係変容プロセスと家族に対する規範意識の広がりについて

ゼミ生からのメッセージ

教育臨床心理学ゼミの一番の特徴は、「想像を超える学び」を実現できることです。院生は心理臨床や教育実践にかかわる分野の中で好きな研究テーマを設定し、研究を進めていきます。そのため院生の研究テーマは多岐に渡っており、ゼミでは様々な専門分野によって構成されたディスカッションが展開されています。こうした議論は、時に今まで自分の引き出しにはなかったような知識や学問分野への道を開いてくれます。
私の研究は、学校教育実践の分析からスタートしましたが、ゼミでの学びを通じて、発達にかかわる問題、被虐待経験、乳幼児の子育てなど様々な領域について興味を持つことができました。こうして研究の幅が広がったことは、結果として自分のもともとの研究テーマに大きな影響を与え、そして今の仕事にも大きな影響を与えています。
自らが研究テーマを決められる、ということは自らの手で暗中模索しながら研究を進めていかなくてはならないことを意味するかもしれません。幅広い興味関心を持つことができることは、それだけ論文としてまとめ上げることが難しくなることを意味するかもしれません。こうした点では、教育臨床心理学ゼミはけっして学びやすいゼミではないですし、必ずしも親切なゼミとは言えないかもしれません。しかし、自らの興味関心を広く深く探求したい、という方にはこれ以上ないゼミであると思います。ぜひ、自分の想像を超えた学びを体験してみませんか?(2011年度博士後期課程単位取得退学 川俣智路)

研究成果

●著書

  • 渡邊誠(2015)こころの健康を考える-人と人とのかかわり合いのなかで 北海道大学生活協同組合教職員組織委員会発行
  • 渡辺誠(2012)アーヴィン・D・ヤーロム 中久喜雅文・川室優 監訳(共訳)『グループサイコセラピー 理論と実践』、西村書店、渡辺担当個所:第1章「療法的因子」pp.1-24、第17章「グループセラピストの訓練」pp.736-765

●論文

  • 吉武もにか,渡邊誠(2021) 葛藤を抱えた青年の親子関係変容プロセスと家族規範意識について-北海道大学大学院教育学研究院臨床心理発達相談室紀要 第4号 pp.57-74

  • 寺田拓晃,渡邊 誠(2021) 「メンヘラ」の歴史と使用に関する一考察-北海道大学大学院教育学研究院臨床心理発達相談室紀要 第4号 pp.1-16

  • 中西萌子,渡邊 誠(2020) 現代における生きづらさについての一考察 ―未婚女性へのインタビューを通じて- ―北海道大学大学院教育学研究院紀要 第136号 pp.121-146

  • 吉武もにか,渡邊誠(2020) 家族関係に対するネガティブな認知が変容する要因について ―北海道大学大学院教育学研究院臨床心理発達相談室紀要 第3号 pp.19-48

  • 藤林沙織,渡邊 誠(2020) いじめの回復プロセスに関する一考察 ―北海道大学大学院教育学研究院臨床心理発達相談室紀要 第3号 pp.1-17

  • 草岡章大, 渡邊 誠(2019) 初任セラピストの自己開示へのためらいと職業的自己の発達に関する質的研究 ―人間性心理学研究 第37号 pp.43-55

  • 藤林沙織,渡邊 誠(2019) 児童生徒の視点から見たスクールカーストという体験とその影響に関する研究  ―北海道大学教育学研究院紀要 第134号 pp.145-169

  • 渡邊誠(2019) 初学者への臨床心理スーパーヴィジョンに関する留意点 ―北海道大学大学院教育学研究院臨床心理発達相談室紀要 第2号 pp.1-6

  • 渡邊誠(2018) 臨床心理学的講義法に関する考察-臨床心理学的内容を臨床心理学的原理を体現する形で伝達する試み-  ―北海道大学大学院教育学研究院紀要 第133号 pp.149-160

  • 渡邊誠(2017)臨床心理学における事例研究の位置づけと課題―看護研究 第50巻 第5号 pp.455-460.

  • 渡邊誠(2013) 臨床心理学における事例研究の役割に関する考察―北海道大学大学院教育学研究院研究紀要 第118号 pp.225-234.

●学会発表

  • 渡邊誠(2020)外傷的死別体験に対する持続エクスポージャー療法施行後の面接過程  日本心理臨床学会第39回秋季大会

  • 渡辺誠(2016)成人女性に対する鬱状態の誘発要因の検討を中心とした心理療法-アカデミック・ハラスメントと青年期における肉親との外傷的死別が関与した事例-、日本心理臨床学会第35回秋季大会

  • 渡辺誠(2015)原家族でのDV被害を訴え対人面に問題を抱える男子学生との面接、日本学生相談学会第33回大会
  • 渡辺誠(2013)より高くを目指す学生への支援-寂しさを抱えながら高みを目指した理系女子学生の成長過程-、日本学生相談学会第31回大会
  • 渡辺誠(2011)性被害女子学生を教員と学生相談員の二つの役割で支えた事例-その2:卒業後の十数年の経過-、日本学生相談学会第29回大会
  • 渡辺誠(2010)性被害女子学生を教員と学生相談員の二つの役割で支えた事例-その1:在学時の経過-、日本学生相談学会第28回大会
  • 渡辺誠(2009)同性愛との「受容」ではない折り合いを求めて-同性愛的欲求に苦しむ男子学生との面接過程-、日本学生相談学会第27回大会

博士研究テーマ

  • 初任セラピストにおける自己開示へのためらいに関する探索的研究
  • がん体験者の心の探求に関する探索的研究 -グループ・アプローチ“機能的サブグループ”を用いた未知なるものへの直面と探求の効用

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