グループの対象とする研究領域は次の3点である。
第一は、具体的な労働過程と労働編成の分析を通じて、現代の多様な諸産業部面で求められる労働力の質を明らかにすることである。
第二は、現代的な労働能力を形成する教育訓練のあり方を問うことである。しかしその場合、「学校における教育」を直接の対象にするというより、経済・産業・企業の動向との関係に重点を置いている。すなわち、企業社会における教育システムや労務管理による処遇のあり方との関係において、労働者の職業的自立や資格制度の意味合いが吟味されなければならない。第三に、現在職業能力の形成にあたって学校や厚生労働省その他の公共的機関における教育が重要性を増している。中高年失業者の再就職の促進や、技術革新・産業構造の変化による在職者訓練、あるいは増大する学卒フリーター問題の解決のためにもそれらは期待されている。こうした期待にこたえるには何が必要かを考察している。
以上のように、いわば産業教育グループの研究領域は、これまで、"労働"にかかわる諸分野を研究してきた社会政策学・労働経済学・労働社会学・産業教育学・経営労務管理論などの幅広い領域とかかわりのなかで位置づいている。このかかわりの中で、"労働力の陶冶"による自立の意味と条件を考察するところに当グループの核心とユニークさがある。