先住民族教育、先住民族の言語復興運動、先住民族に対する異文化間理解教育、先住民族学(インディジェナス・スダディーズ)、人権教育、大学・学校と地域との連携
教育人類学は、1960年代以降に米国で発展した学問領域であり、教育現象を文化伝達として捉え、そのメカニズムを人類学的手法で研究します。対象は未開社会の教育慣行から、現代の産業社会における学校教育まで広がっており、「文化」と「学び」の接点を多角的に捉えています。人類学的手法とは、フィールドワーク、つまり、長期的な現地調査を通じて、研究の対象者となる個人や集団・コミュニティーと信頼関係を築き、当事者のエミクな視点を得るとともに、それをマクロな社会的環境に位置付けることを目指す研究法です。近年は社会の権力関係に対する理解の深まりや現場の状況に即した研究要請の増加に伴い、当事者たちとの共同・協働による応用的な研究所法も求められるようになってきています。
・自らを取り巻く社会文化的環境を批判的に、自他関係を反省的に捉える努力をする
・既存の認識や思考の枠組みを積極的に問い直したり組み替えたりする
・現代社会の構造について歴史的視点から理解する
・「学習」や「教育」の概念を広く捉え、人間の成長や生活のさまざまな局面における「学び」について考える
長年、アイヌ民族のための民族教育を将来的に開始することに向けての検討を進めてきました。文化保存会や博物館などで参与観察をしつつ、ライフヒストリー研究と合わせて文化継承のメカニズムを解明しようとしました。但し、現在まで続いている保守的な日本国のアイヌ政策の元ではアイヌ民族教育は実施も配慮されてきませんでした。また、アイヌとしてカミングアウトがなかなか見られない社会的風土も合わせて存在しています。そのため、アイヌの人々が民族的出自に誇りが持てる環境、また、教育権を勝ち取るための運動の形成要因や条件に関心が広がり、アイデンティティや運動も多角的に研究するようになりました。博士論文では表象の問題も扱ってきました。北海道大学に赴任してから、和人学生や留学生にアイヌのことをどのように理解してもらえると、先住民族に関する異文化間理解に研究関心が拡大しており、現在、非先住民が先住民をどのように応援できるかに関する調査にも取り組んでいます。また、平成24年度に文化庁の委託事業としてアイヌ語の実態に関する調査も行ったことがあります。
Imagining Japan in Moscow and Sakhalin, and Imagining Russia in Tokyo and Hokkaido: Contrasting identities and images of Other in the center and periphery(モスクワ及びサハリンから見た日本と東京及び北海道から見たロシア: 中心と周辺地域における「他者」に対する日本及びロシアのアイデンティティとイメージの対比)(令和1年度)
Shinto Shrines and Japanese Secularity, 1868-1945(神社と日本世俗、1868年~1945年)(令和2年度)
アイヌの行為と同化・文化伝承―民族関係を通して―(令和5年度)
The Power of Ancestral Language: Exploring Language, Trauma and Empowerment in the Ainu Context (令和7年度)
公立学校教育におけるアイヌ民族の学習について―千歳末広小学校と二風谷小学校の調査を中心に(平成29年度)
多民族混住地域ハラチン左翼モンゴル自治県における文化とアイデンティティの歴史的変容に関する研究―3人の物語の伝承者の語りを中心に― (平成30年度)
The Current Living and Communication Situation of Marine-processing Industry Chinese Technical Intern Trainees in Hokkaido under the Hokkaido Tabunkakyousei Society: Taking E-Town as an Example(北海道の「多文化共生社会づくり」のもとでの中国人技能実習生の生活、交流の実態に関する考察—E町における水産加工業技能実習生を例として—)(令和2年度)
The Socio-Political Significance of Ainu Self-Representation: Comparison of Japanese Government and Ainu-created Media(アイヌ民族の自己表象の社会的政治的な意義―日本の政府と当事者が製作したメディアの比較―)(令和3年度)
A Study on Language Use among Yi Ethnicity: College-Educated Young and Middle-aged Bilingual Speakers Living in Xichang City, Liangshan Prefecture's Mixed Multi-ethnic Area (彝族の言語使用・言語態度に関する研究―多民族混住地域凉山彝族自治州西昌市に住む大卒の若者と壮年のバイリンガルスピーカーを例として―)(令和6年度)
マジョリティがマイノリティに対して関心及び特権(majority privilege)意識をもつきっかけについて―和人とアイヌの関係を中心に―(令和7年度)