「支援と発達を科学する」

このコンセプトには、子育てや教育において避けて通れない「支援」や「発達」という概念を、その根本のところから議論し研究しようという願いが込められています。
現代社会には様々な矛盾があります。教育が系統的かつ組織的に行きわたっているはずの日本でも、「生きづらさ」を抱えている人が少なくありません。そこには、教育の実践や研究そのものが、こうした社会状況に加担している構図が見え隠れします。格差や貧困をはじめ、「生きづらさ」は複雑で構造的な問題系ですが、研究はしばしば因果関係を限定してしまい、問題を矮小化してしまうことがあります。
当センターでは、自然科学から社会科学、人文科学にまたがる学際的なスタッフの交流を通して、「人の育ち」を真に支えうる「支援と発達」の研究を総合的に推進したいと考えています。

子ども発達臨床研究センターのルーツは、北海道大学教育学部が開設されて間もない時期に生まれた「北大幼児園」にさかのぼります。戦後復興期、幼児の保育環境と学生たちにとっての生きた学びの場を両立させるために、キャンパス内での青空保育が始まったのが1952年5月のことです。
1978年に、「乳幼児発達臨床センター」として、現在の研究棟の基礎ができました。施設内で実験保育室としての幼児園を継続し、幼児集団を基盤として発達と臨床の研究を推進してきた国内でも類例のない研究施設です。1980年代には、母子愛着研究の世界的研究拠点の一つとなり、発達心理学の教科書でも紹介される知見を生み出してきました。
2006年から現名称となり、幼児園は2010年に閉園しましたが、研究の射程を青年期まで延ばし、また子どものみならず対人援助職(支援者)に関する研究も展開しています。2014年には教職高度化研究部門を新設し、2016年からは北海道及び札幌市等と連携した「子どもの生活実態調査」を推進しています。

子ども発達臨床研究センターでは、研究者から実践者への一方向的な知の伝達ではなく、実践的課題の中に最先端の学術的課題があるとの視座から、共同研究や各種イベントを通した往還的サイクルにより「支援と発達を科学する」研究拠点を目指します。

センター長 川田 学