北海道大学教育学部パンフレット

知屈 学びのキーワード:身体文化論、身体文化史、スポーツ史 北海道の森の中で 身体存在から世界を「みつめる」 身体文化論 泄1田恵子 前ヴィクトリア時代のスポーツ史に関する貴重本、原書など 森と一体となる授業(2023年余市エコピレッジ) 心身二元論の脱構築、脈動する自然、森への回帰 森林面積日本一の北海道で考える身体文化論 近代社会は操作概念上、心と身体を区別する心身 二元論に陥リがちですが、ニーチェが「身体は精神の 道具ではなく、精神が身体の道具だ」と挑戦的な比喩 を用いたように、そしてコロナ禍で多くの人が気づいた ように、人間存在とは思考する身体そのものであると いうことが、私が取リ組んでいる身体文化論のテーマ です。スポーツや体育に限らず、どのような事象も身体 存在を通したパースペクテイプから捉え直すことでは じめて、近代の臆説を相対化し、歪みのないレンズで 世界を見ることができると考えています。 この前提をわかリやすく言えば、オンライン化やAl、 Chat GPTの時代になっても、ヘンリー・デイヴィッド・ ソローの哲学の通リ、「人は元来森から来たのだ」とい うこと、林間学校教育は科学と文学双方の生みの親 であリ、その中でもとリわけ「歩く」という行為は逍遥 学派に代表されるような知的活動であることを授業で 伝えています。実際、物理的な移動が困難だった時期 を経験したポストコロナの学生たちはスポーツや森に 対する関心がかつてよリ研ぎ澄まされ、その源泉を探 っていくとまさに人とは身体存在であるという私の話 に共感する傾向が増したように感じています。 私自身は学部卒業後、社戸科の教員免許に加え て、保健体育の教員免許を取得し、英国文化の歴史 に興味があったことから、こ卜らのすぺてをひとつに したような前ヴィクトリア時!やのイギリススポーツ史 をテーマに博士論文を書きました。そのような自身の 狭い専門で講義することはあまリなく、どのようなテ し ーマも魅力的なものだと考えていますが、「身体とい うパースペクテイプ」に根づいた未来志向の創造性を 奨励しています。 しかも、私たちが自然との共生や健やかなスロー ライフをどう築いていくか(」ついて考えるとき森林 面積が日本一の北海道にI~ 身体文化論の肥やしと なる自然環境が広がっています。北海道各地で展開 l されるウィンタースポーツのスキーやカーリング、あ るいはウォーキングの歴史Ii北海道の地方の問題だ けでなく、日本の将来的な lジョンを描く上で、多く の課題と可能性を胚胎してしるように思います。学生 時代から実感を伴ってピジョンを描けることこそ、北 海道大学ならではの強みではないかと考えています。 12

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