生徒指導論ゼミは2つの課題をもっています。
第1に、現代の中学校・高校における生徒指導・道徳教育の総合的な考察をするという課題です。しかしこれは、これまでの日本の中等教育の編成原理の歴史的・社会的な限界を迎えているという事情から、根底的な考察を必要とする課題でもあります。平等な競争を組織するための機能に重点をおいた教育システムは、教育本来の役割である生徒の学修を動機づける力を大きく失いました。生徒にとって、将来の「よい生活」から逆算された「よい仕事」や「よい進学」は、近年の大きな社会変動により、「空手形」に感じられるようになってきました。これがこれまで生徒指導・道徳教育が前提としてきた生徒自身の「自己規範力」を大きく削ぐことにもなっています。本ゼミの課題は、若者のサブカルチャー、生徒文化、生徒間のコミュニケーション、自己意識の変化の社会学的な研究を基礎にして、生徒指導・道徳教育の未来を検討することです。
第2に、北海道の特定の中学校・高校とそれらが存する地域社会を対象とした実証的研究を通じて、第1の課題を考えることです。これまで、北海道の様々な地域の中学校・高校の生徒指導・進路指導と生徒の将来志向に関する研究を行ってきました。近年は、「地域消滅」が取り沙汰されています。地域格差の拡大のもとで人口急減する地域の中学校・高校を対象とした研究を行ってきました。対象とした地域を上げると、釧路市、夕張市、西興部村、興部町、下川町です。現在はさらに、人口急減地域の若者の地域・将来志向と中学校・高校の生徒のそれを連動して検討する研究に着手しています。このようなことから、毎年地域調査を行います。2018年度は「下川町のふるさと教育の現状と課題」というテーマで、若手町議会議員・「下川ジャンプ少年団」に関する調査と下川中学校の生徒調査に取り組んでいます。